私は当サミット主催者として開催にあたり、
①アジア太平洋アフリカの子供たちの未来の食糧の自給確保の拡大
②世界的気候変動による相互協力体制
を目的と致しました。
このサミットは谷垣禎一先生とウガンダにご一緒したことから始まり、そして安倍晋三内閣総理大臣と二階俊博幹事長のご決断で開催が決まり、菅義偉内閣総理大臣、岸田文雄内閣総理大臣と 3 代に渡り連携され、開催することが出来ました。このことは、日本として子供たちをいかに大切にしているかの証であると考えております。本当に感謝してもしきれません。
また、戦後日本が学校給食に国を挙げて力を入れた結果、当時栄養不足だった子供たちの成長に大きな改善がありました。アフリカにおいても、学校における飲料水の確保や給食問題の改善について議論していくことが大事だと考えました。より具体的な議論につながればと、来日されたファーストレディの皆様には、小学校での特別授業、給食体験を本サミットに加えさせていただきました。
ファーストレディたちは、「せめて子供たちが学校にいる間だけでも、安全で清潔な水にアクセスできる環境を作りたい。学校で水を汲み持ち帰り、家でも飲めるようにしたい」と口々に話されており ました。なぜなら、学校に通えない子供たちがおり、遠方までの水汲みは多くの時間を要し、水汲みの間に連れ去られる子供たちがいるからです。
子供たちにとっては、国境や宗教・政治も関係ありません。
このサミットで、“国の母”として世界に向けてファーストレディの総意で共同宣言が成され、発信されたことは、子供たちのための次のステップに向けての大きな力となりました。
コロナ禍により、開催予定から3度延期を余儀なくされるなか、その都度ご都合をつけて参加のご意向をいただいていたにもかかわらず、今回日程の都合により、ご参加いただけなかったファーストレディの皆様方が深いご理解を示しめてくださったこと、感謝の意を申し上げます。
二階俊博 衆議院議員
経済産業大臣 他大臣歴任
自由民主党元幹事長
食糧危機から子供を守ることは、全世界の共通の課題です。
国の母の立場で皆様方にご参加をいただき、意見交換をするのは大変貴重だと私は考えています。“女は弱し されど母は強し”という諺があります。
強き母の力を今回の第一回アジア太平洋アフリカ女性経済サミットを通して是非とも結集していただきたいと思って参りました。
それが子供たちの未来を強いものにすると確信するからです。
世界はアフリカの現状を十分理解した上で協力していく必要があります。
日本は人に対する投資で協力していきたいと考えております。
いついかなる時でも日本に対するご意見等があれば、おっしゃって下さい。
女性活躍社会の為には女性の力が必要であることは言うまでもありません。
皆様方のご活躍を心より願っております。
谷垣禎一 元衆議院議員
財務大臣 他大臣歴任
自由民主党元総裁
アフリカ各国のファーストレディの皆様のご参席を戴いたこのサミットの会議が“子供たちの持続可能な食糧と水”についてであることをとても、感慨深く、また大変誇りに思います。
2007 年ウガンダに伺った際には、貴重なビクトリア湖の水位が大幅に減少しており、とても心が痛んだことを鮮明に覚えています。それから 15 年の歳月を経て、本サミットが実現されました。
今回ファーストレディの皆様の総意で“災害時にも、出来る範囲で助け合うこと”や“農業・気候変動等への技術協力”も共同宣言として世界に向けて発信がなされました。
国の母としてここ東京で成し得た“子供たちの未来の為の協力の輪”が、子供たちの将来の躍進に大いに繋がることを祈念致しております。
最終日の 12 月1日、岸田文雄内閣総理大臣は、にこやかにアフリカのファーストレディたちを迎えた。
歓談に先立って、岸田文雄内閣総理大臣は次の様に話された。
皆様の訪日を歓迎いたします。
第一回アジア太平洋アフリカ女性経済サミットにご出席の皆様とお伺いしております。心から歓迎申し上げます。
食糧分野の、食糧の自給確保、防災に焦点をあてて、議論が行われたときいております。各国相互協力 さらにウクライナ侵略における世界的な食糧危機が懸念されている。その中における女性の方々あるいは子供の皆様への支援が急務となっております。
今年開催された TICAD 8においても、女性への質の高い教育へのアクセスですとか、女性の参画推進、農業分野の人材育成、こうした事が議論になりました。
是非 日本としても引き続き女性の皆さんや子供の皆さんを守るべく 取り組みを進めていきたいと思っています。
岸田 文雄 内閣総理大臣
岸田文雄内閣総理大臣との面談の際、総理よりファーストレディの皆様に「各国の相互協力、世界的な食糧危機の懸念、女性の方々・子供たちへの支援が急務である。日本としても引き続き女性の皆さんや子供の皆さんを守るべく、取り組みを進めていきたいと思っております」とのご発言をいただきました。
ファーストレディの皆様は感激され、今回の会談がとても有意義であり、本国の子供たちへの大きな希望になると感謝されて帰国の途につかれました。
私たちは ここに集い、それぞれの国を代表して、「子供たちが生き抜く為に必要とする持続的な食糧生産や、よりピュアな水の確保」に揺るぎない意思をもって、今日ここに世界に向けて宣言致します。
近年子供たちを取り巻く環境は多くの困難に瀕しています。 異常気象を原因とする旱魃・大洪水・歴史的嵐やバッタの大量発生、そして感染症や危険な環境下での出産等々、子供たちへの影響は計り知れません。
「生まれてくる子供たちが健康に育ってほしい」という私たちの願いは、国境や宗教を越えて、世界の母たちの共通の願いであります。
そしてアフリカの子供たちが、戦争で涙を流すことの無きよう努力を続けます。
この切なる願いを叶える為にも、私たちは、先進諸国が持っている食糧確保のための技術の取得を必要としています。
従って先進諸国の技術提供、及び技術指導をいただけることを、私たちは強く望んでいます。
それはアフリカに生きる子供たちの勇気と知恵を大いに喚起するでしょう。
世界中が気候変動に大きな影響を受けている今、この子供たちの光り輝く生命を守るために、私たちは共に協力し合い、励ましあいながら、未来に向けて前進し続ける所存です。
私たちは、アフリカ各国の母としてここに誓います。
2021 年 12 月 7 日に JICA 栄養宣言「栄養をすべての人々へ〜人間の安全保障のための 10 箇条の約束〜」を発表しました。
また、アフリカでのコメ生産倍増を目指す取組「アフリカの稲作振興のための共同体」が、今ウガンダ、ザンビアなどアフリカ 32 か国で進められており、農業かんがい計画アドバイザーを派遣したり、灌漑プログラムの持続的な利用の運営、稲作開発プログラムの企画などを行っています。
JICA はタンザニアで、1970 年代から、ジェンダーや農業機械を含め稲作に関する研修を各地で実施した結果、女性も参画の上でコメの生産量を大幅に増加させる土台を築けたと考えています。
2008 年の TICAD 4で、福田康夫内閣総理大臣がアフリカの米の生産量を 10 年で 2 倍にする目標を掲げ 2018 年に達成できました。
この倍増に貢献したのがアジア稲とアフリカ稲の交配からできた陸稲のネリカ (New Rice for Africa) です。ネリカは 1 から 18 までの18 品種がありネリカ4が一番人気です。
ネリカは穂が大きく 1 本の穂に付く籾数が従来の陸稲品種に比べて 2 倍近くあり高収量が得られます。
また、播種から 115 日程度の短い期間で収穫できます。
陸稲のネリカ栽培に必要な降雨量は 5日間で 20mm 以上です。
ネリカは水田が無くても畑地で栽培できるし、苗作りや田植えの必要が無く今までの畑作と同様に播種して覆土するだけと簡単です。またイネなので雨季に湛水した所でも良く育ちます。
15 年前、ウガンダの試験圃場で栽培されていた“ネリカ米”を指さしながら谷垣禎一 衆議院議員に「米の増産を、日本を代表して頑張りたい」と話す坪井達史氏の姿が今でも忘れられない。
坪井氏は「アフリカでは新しい品種、肥料、灌漑施設の支援をしても農家に栽培技術研修を行わないと稲作の普及や定着はしないだろう」と語った。
小学校の4年〜6年生の1クラスにつき1カ国ファーストレディが教壇に立たれ、30分の特別授業を快く引き受けてくださったファーストレディ。
授業は初めから驚きの連続だった。ファーストレディは、各本国から、日本の子供たちへ分かりやすい教材を用意していた。本国の野生動物や地形の紹介、同じ年頃の子供たちの紹介ビデオ、また本国の音楽の紹介もあった。
クラス毎に、様々な方法で独自の特別授業が展開され、子供たちは目を丸くして驚きながらも、授業をとても楽しんでいた。
そしてファーストレディを迎える子供たちも、ファーストレディの母国について学び、掲示物や歓迎の言葉などが所狭しと教室に張り出してあった。これにはファーストレディも驚いた。 市長、教育長をはじめ、校長先生を筆頭に学校側が子供たちとファーストレディの母国について事前に準備を重ねてくれていたからだ。
日本の子供たちと直接触れ合ったことにファーストレディは、笑顔でこう語った。「子供たちは世界中どこでも皆同じで、目がとってもキラキラしている。これをきっかけに子供たち同士の交流がより深まり、更に良い関係が築けると嬉しい」と。
佐藤利春校長先生は「生徒たちが、ファーストレディから心のこもった授業を直接受けられて、ありがたい」と何度も語っていた。
そして「このまたとない経験は必ず子供たちの心に残り、日本とアフリカに留まらず、子供たちの豊かな未来に繋がると思います」と力を込めて語った。
特別授業を見て国の母であるファーストレディたちが、いかに子どもに愛情を注いでいるかが分かり感動した。
子供たちの食糧安定供給を目指し来日されたファーストレディは 7 名。
7 か国の“国の母”たちがさいたま市立美園北小学校を訪れ、子供たちと一緒に日本の学校給食を体験した。
子供たちの栄養状態をなんとか改善しようとして始めたのが学校給食だ。日本の給食は安心安全が第一で、発達段階に応じた必要な栄養をバランスよくとることが義務付けられ、毎日の献立が作られている。
命に感謝するために手を合わせること、給食の献立が必要な栄養素を網羅していること、献立のメニューが日替わりであることなど、驚きの連続であった。
ウガンダのナッパンジャ首相は「良い取り組みを見せてもらった。ここで学んだことの多くを、本国で学校給食の施策作りに活かしたい」とおっしゃった。
“安全な水へのアクセス”は、アフリカ各国が最優先に解決したい問題だ。
安全な水があれば、感染症にもかからないと、各国大使館は口を揃えて言う。
「水汲みで学校に通えない」
「不衛生な水を飲むことで、児童の死亡率が高い」
「農村には飲料水が少ない」と。
アフリカには小さい村々が点々としている。砂漠地帯や水源があっても、飲料水に適さない水質等々、問題はたくさんあるだろう。
しかし、協力を惜しまない日本の技術者たちがいる。空気中から飲料水を作る装置、フィルターを使ってきれいな水を届ける装置で、デモンストレーションを行った。
日本のフィルターを用いて濾過した。フィルターはコレラ菌などの微生物を排除する優れものである。安全に飲めるようになったお水をファースト レディの前で試飲した。
「どれくらいの水量が確保できるのか?」
「コストは?」
「電力は?」
質問が続いた。
今回のサミットでは、まず子供たちの健康を守るという観点で、学校での清潔な水へのアクセス、米を中心とした栄養改善という目標の基に動き始めることが出来ました。
子供たちの学びの場でもある学校で安全な水を供給するという取り組みにも、より一層力を入れていきたいと考えております。
米の取り組みについては、本サミットでご講演いただいた JICA の坪井達史専門家による “ネリカ米育成のための調査”を、ジンバブエに於いて 2023 年 3 月になされております。
次なるサミットの開催に向けて、“STEP to STEP”となるよう、サミットにおいて提起された諸問題に、全力で取り組んで参りたいと決意しております。
本サミットにお力添えを賜りました国内・外の関係者の皆様に、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
また、当サミット実行委員会 最高顧問 二階俊博先生、相談役 谷垣禎一先生、遠藤利明先生には、限りないご指導、お力添えを賜り心からの御礼を申し上げます。
お世話になった皆々様には、どうぞこれからも変わらぬご厚情賜りますようお願い申し上げます。
令和5年1月
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